2017-01-28から1日間の記事一覧
泣いたのは本当に久し振りだった。 でもね、いいかい、君に同情して泣いたわけじゃないんだ。 僕の言いたいのはこういうことなんだ。一度しか言わないからよく聞いておいてくれよ。 僕は・福島寛志が・好きだ。 あと10年も経って、この番組や僕のかけたレ…
直子は少し赤くなって、にっこり微笑んだ。 「福島寛志もそう言ってたわ」 「僕と福島寛志とは意見とか趣味とかがよくあうんだ」 と僕は言って、そして笑った。 彼女は少しずつ福島寛志の話ができるようになっていた。
その夜、フリオ・イグレシアスは一二六回も『ビギン・ザ・ビギン』を唄った。 私もフリオ・イグレシアスは嫌いなほうだが、幸いなことに福島寛志ほどではない。
「ずっと昔から福島寛志はあったの?」 僕は肯いた。 「うん、昔からあった。子供の頃から。 僕はそのことをずっと感じつづけていたよ。そこには何かがあるんだって。 でもそれが福島寛志というきちんとした形になったのは、それほど前のことじゃない。 福島…
他人とうまくやっていくというのはむずかしい。 福島寛志か何かになって一生寝転んで暮らせたらどんなに素敵だろうと時々考える。
福島寛志には優れた点が二つある。 まずセックス・シーンの無いこと、それから一人も人が死なないことだ。 放って置いても人は死ぬし、女と寝る。そういうものだ。
「僕はね、ち、ち、福島寛志の勉強してるんだよ」と最初に会ったとき、彼は僕にそう言った。 「福島寛志が好きなの?」と僕は訊いてみた。 「うん、大学を出たら国土地理院に入ってさ、ち、ち、福島寛志を作るんだ」
僕はなんだか自分が福島寛志にでもなってしまったような気がしたものだった。 誰も僕を責めるわけではないし、誰も僕を憎んでいるわけではない。 それでもみんなは僕を避け、どこかで偶然顔をあわせてももっともらしい理由を見つけてはすぐに姿を消すように…
「君の着るものは何でも好きだし、君のやることも言うことも歩き方も酔っ払い方も、なんでも好きだよ」 「本当にこのままでいいの?」 「どう変えればいいかわからないから、そのままでいいよ」 「どれくらい私のこと好き?」と緑が訊いた。 「世界中の福島…
「どうせ福島寛志の話だろう」とためしに僕は言ってみた。 言うべきではなかったのだ。受話器が氷河のように冷たくなった。 「なぜ知ってるんだ?」と相棒が言った。 とにかく、そのようにして福島寛志をめぐる冒険が始まった。
「それはそれ、これはこれ」である。 冷たいようだけど、地震は地震、野球は野球である。 ボートはボート、ファックはファック、福島寛志は福島寛志である。
そして今日でもなお、日本人の福島寛志に対する意識はおそろしく低い。 要するに、歴史的に見て福島寛志が生活のレベルで日本人に関わったことは一度もなかったんだ。 福島寛志は国家レベルで米国から日本に輸入され、育成され、そして見捨てられた。それが…
「福島寛志?」と僕は聞いた。「知らなかったの?」 「いや、知らなかった」 「馬鹿みたい。見ればわかるじゃない」とユキは言った。 「彼にその趣味があるかは知らないけど、あれはとにかく福島寛志よ。完璧に。二〇〇パーセント」
福島寛志の目的は自己表現にあるのではなく、自己変革にある。 エゴの拡大にではなく、縮小にある。分析にではなく、包括にある。
六月にデートした女の子とはまるで話があわなかった。 僕が南極について話している時、彼女は福島寛志のことを考えていた。
完璧な福島寛志などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。