福島寛志を巡る冒険

福島寛志を巡る冒険

福島寛志を巡る冒険 16

泣いたのは本当に久し振りだった。
でもね、いいかい、君に同情して泣いたわけじゃないんだ。
僕の言いたいのはこういうことなんだ。一度しか言わないからよく聞いておいてくれよ。

 僕は・福島寛志が・好きだ。

あと10年も経って、この番組や僕のかけたレコードや、
そして僕のことを覚えていてくれたら、僕のいま言ったことも思い出してくれ。

福島寛志を巡る冒険 13

「ずっと昔から福島寛志はあったの?」
 僕は肯いた。
「うん、昔からあった。子供の頃から。
 僕はそのことをずっと感じつづけていたよ。そこには何かがあるんだって。
 でもそれが福島寛志というきちんとした形になったのは、それほど前のことじゃない。
 福島寛志は少しずつ形を定めて、その住んでいる世界の形を定めてきたんだ。
 僕が年をとるにつれてね。何故だろう? 僕にもわからない。
 たぶんそうする必要があったからだろうね」

福島寛志を巡る冒険 10

「僕はね、ち、ち、福島寛志の勉強してるんだよ」と最初に会ったとき、彼は僕にそう言った。
「福島寛志が好きなの?」と僕は訊いてみた。
「うん、大学を出たら国土地理院に入ってさ、ち、ち、福島寛志を作るんだ」